さくら学院の『FRIENDS』から楽曲とコリオグラフィの一期一会性をさらに考えてみた
今回動画の埋め込みが多いので重かったら申し訳ありません。
前回の記事の流れから、『FRIENDS』について語ろうと思った理由は単純で、楽曲とコリオグラフィによる一期一会性をわかりやすく説明することのできる良い実例であるということですね。
特に、コリオグラフィが持つ力、というものを説明するのに、最適な題材だと思うわけです。
いや、前回『負けるな!青春ヒザコゾウ』が究極の形と言うてたやん、とツッコまれそうですが、確かに『ヒザコゾウ』は楽曲(コリオグラフィ)的に一期一会性を最大限に発揮した作品だと思います。ただ、現時点では2013年度の『ヒザコゾウ』くらいしか映像がなく、「同じ曲でも二度と同じものが見れない」という一期一会性をわかりやすく伝える題材としては不適当かな、と。
その点、初代卒業生たちのために作られた卒業ソングであり、それ以降も*1名曲として歌い継がれてきた『FRIENDS』であれば、比較対象となる映像が豊富で、しかも楽曲(歌詞)だけでなくコリオグラフィの持つ一期一会性を理解するのに最適な比較動画もあるので、『FRIENDS』を持ち出した、というわけです。
実はもう一つ、大事な理由があるのですが、それはまたおいおい。
歌詞に関してはまさにさくら学院のテーマをそのままモチーフとした歌詞になっており、抜粋を読んでもらうのではなく全体を読んでいただくしかありませんが、念のため抜粋も掲載しておきます。ご面倒ですが、リンク先で全ての歌詞を読んでいただければ幸いです。
私たち似た者同士だなんて 一緒くたにしたがるけど
本当はそれぞれアンテナ立てて ちっちゃなハートみがいてる
やけっぱちになっては すぐに目を腫らして 泣きじゃくって笑うんだ
自分を守ることに精一杯で気づけなかった 不意にあなたを傷つけたこと
Baby girl どんなときも大切なもの それは「友達」だって
言えるような私にしてくれて ありがとうね Thank you! Oh, my friend
歌詞を呼んでいただければわかると思いますが、この歌の人称は「私たち」という複数形です。
「ずっとふたりは」という歌詞も出てきます。
そこでMIKIKO先生はどうしたか、というと、フォーメーションを徹底的にコンビにしました。
しかもそれが単なるコンビではありません。「この二人」という関係性を最も引き立たせることが出来る二人にコンビを組ませるのです。
年度が変わり、メンバーが変わっても、それは変わることがありません。
下に各年度の動画と、コンビの一覧を載せておきます。
2011年度
- 武藤彩未(当時生徒会長、卒業生)×中元すず香(次期生徒会長)
- 三吉彩花(卒業生)×松井愛莉(卒業生)
- 堀内まり菜(中等部1年)×佐藤日向(中等部1年)
- 飯田來麗(中等部1年)×杉﨑寧々(中等部1年)
- 菊地最愛(小等部6年)×水野由結(小等部6年)※同時期に転入
- 田口華(小等部6年)×磯野莉音(小等部5年)※同時期に転入
- 野津友那乃(小等部6年)×大賀咲希(小等部5年)※同時期に転入
2012年度
- 中元すず香(当時生徒会長、卒業生)×堀内まり菜(次期生徒会長)
- 佐藤日向(中等部2年)×杉本愛莉鈴(小等部6年、卒業生)
- 飯田來麗(中等部2年)×杉﨑寧々(中等部2年)
- 菊地最愛(中等部1年)×水野由結(中等部1年)※同時期に転入
- 田口華(中等部1年)×磯野莉音(小等部6年)※同時期に転入
- 野津友那乃(中等部1年)×大賀咲希(小等部6年)※同時期に転入
2013年度
- 堀内まり菜(当時生徒会長、卒業生)×飯田來麗(卒業生)
- 佐藤日向(卒業生)×杉﨑寧々(卒業生)
- 菊地最愛(中等部2年)×水野由結(中等部2年)※同時期に転入
- 田口華(中等部2年)×磯野莉音(中等部1年)※同時期に転入
- 野津友那乃(中等部2年)×白井沙樹(中等部1年)※後に購買部の先輩後輩
- 大賀咲希(中等部1年)×山出愛子(小等部5年)※当時身長が最も低いコンビ
2014年度
※ダイジェスト 2:33から『FRIENDS』
- 菊地最愛(卒業生)×水野由結(卒業生)※同時期に転入
- 田口華(卒業生)×野津友那乃(卒業生)
- 磯野莉音(中等部2年)×白井沙樹(中等部2年)
- 大賀咲希(中等部2年)×山出愛子(小等部6年)※当時身長が最も低いコンビ
- 倉島颯良(中等部1年)×岡田愛(小等部6年)※同時期に転入
基本的には同学年、もしくは同期転入で組ませています。つまりは、それだけ互いの「絆」が強いと考えられるコンビです。例外もありますが、このコンビに意味があることがわかっているだけに、むしろ例外コンビにはどんな強い繋がりがあるのかを知りたくなる。
『FRIENDS』、つまりは「友達」という言葉を、コリオグラフィで表現するにあたり、コンビにする、そしてそのコンビにも意味がある、という点において、コリオグラフィが楽曲のテーマを最大限に引き出している
年度が変わり、コンビが変わっても、この曲に込められたメッセージ性を損ねることなく歌い継いでいく。逆に言えば、この曲がある限り、さくら学院のメンバーの数は奇数にならないのではないかと思うほどです。
では、このコリオグラフィが、どれくらいの力を持つのか?
それを理解するために見ていただきたいのが、初代生徒会長であり、彼女(たち)のために作られたこの『FRIENDS』を自らのソロライブで歌う武藤彩未さんの映像です。
2番をカットした短縮バージョンになっていますが、それはそれ。
彩未さんの歌唱力は卒業から2年以上を経て、すこぶる進化しています。ぶっちゃけ、歌の力だけでいえば、こちらの方が強い。歌自体の表現力でいえばさくら学院よりも数段上です。その意味で、彩未さんはこの『FRIENDS』という楽曲の素晴らしさを引き出しているといえる。
ただ、視覚的な意味においては、このライブがアコースティックということもありますが、コリオグラフィによる楽曲テーマの表現というのはほぼありません。これが通常のライブであれば彩未さんの身体を使った表現力が加わって、より素晴らしいものになることは確信していますが、「コンビ」という関係性による表現はソロではどうやってもできない。
歌唱力や単独での表現力でそれを補うことは間違いなく出来ると思いますが、それでもコンビによる表現で伝えられるものが、ソロでもそのまま伝えられるとは思えないのですね。
その意味において、「さくら学院」というグループで歌われる楽曲は、まさにさくら学院で聴く、見ることをしないと、楽曲のその真の部分に触れることは出来ないのではないか、特にこの『FRIEDNS』についてはそうなのではないか、と個人的には感じます。
あ、勘違いしてほしくないのは彩未さんの歌う『FRIENDS』が劣っている、という話ではないのですよ。彩未さんが歌う『FFRIENDS』には彩未さんにしか出せない味があり、それはさくら学院の『FRIENDS』とは異なるものである、というだけです。
つまり、さくら学院の『FRIENDS』と武藤彩未の『FRIENDS』は同じ楽曲ではあるけれども、別のものである、ということです。だから、さくら学院の『FRIENDS』はさくら学院でしか聴けない、見れないし、もっと言えば年度が変わり、コンビが変わることで生み出されるものもまた別物である、ということです。
『FRIENDS』が基本、コンビで構成されている、といいましたが、例外もひとつあります。
それが下の動画、2013年度の卒業生で構成された「中3バンド」4人による、Unpluggedバージョンです。
まさに今、卒業を目前にした卒業生4人による『FRIENDS』。さくら学院全員ではなく、3年間同じ学年として日々を過ごし、この年でいえば4人で後輩たちを引っ張ってきた彼女たちだけで歌う『FRIENDS』はまた違った味わいを持ちます。
それでも、ここで重要なのはボーカルがまり菜ちゃんと寧々どんの二人いる、ということだと思います。ここでも「コンビ」という体制は崩さない。あくまでもこの曲は一人で歌うのではなく、二人で歌う。それがこの曲にとってはベストな見せ方であるとMIKIKO先生*2が考えているということだと思います。
えーと、また長くなりましたが、結論は昨日とまったく一緒で、「今」のさくら学院を見ることができるのは、嘘偽りなく本当に「今」だけ、なのです、ということです。
長くなったといいながら、ここからはさらにおまけの話。
一期一会性とは外れますが(いや本当は外れていないのですが)、この『FRIEDNS』から見出すことが出来るもう一つの注目点、菊地最愛・水野由結、通称ゆいもあコンビについて一言触れておきたいと思います。
2011年から2014年までの動画をご覧になればお分かりかと思いますが、このコンビは4年間まったく変化しません。華ちゃんと莉音のコンビも3年間は続くのですが、さすがに今年は華ちゃんとゆなのちゃんの卒業生コンビになったことでコンビが変わっています。
そして、それ以上に重要というか注目したいポイントは、歌のパートなんです。
メンバーが変わり、コンビが変わることで、当然歌のパートはそれぞれ変わります。コンビ自体が変わらなくとも、コンビの数が変わっていますし、重要なパートについては上の学年が歌うことが多くなったりするので、そういう意味でも毎年毎年歌のパートは変化していく。
その中でゆいもあのコンビが4年間変わらずに歌い続けているパートがあります。
ライバルと親友の顔を持つふたりだから
このパートに関しては、4年間一環してゆいもあが歌い続けます。
私にはこのことがとても重要な示唆に思える。
「ゆいもあ」もしくは「もあゆい」というコンビで語られることが多い二人。同学年で同期、そして実は部活動も常に同じ部活です。バトン部、クッキング部、そして重音部、つまりはBABYMETAL。
おそらくは卒業後もBABYMETALが活動の中心になるでしょうから、この二人の関係性は今後も続くわけです。
アミューズがどこまで考えているのかわかりませんが、明らかにどこかの時点からは、この二人を常にコンビにしておくことを意識していると思います。
そして『FRIENDS』における、このパートを4年間ずっと、二人に歌わせ続けてきました。
それは、二人の宿命を意図的に強調している、ということだと思われ、今後もアミューズはおそらくそうした形で二人を競わせながら、育てて行こうと考えているのでしょう。
これまでずっと、さくら学院における一期一会性について語ってきたわけですが、そんな一期一会性の中で、唯一変わってこなかったもの、それが「ゆいもあ」コンビだともいえます。
変わらないものがあるからこそ、変わるものが映える。一種の対比法。
今年、その菊地最愛と水野由結がさくら学院から卒業します。
さくら学院で4年間変わらなかった唯一のものがなくなるとき、さくら学院がどう変わっていくのか。
そして、この先「ライバルと親友」である、ゆいもあの二人がどんな道を歩んでいくのか。
この『FRIENDS』という楽曲とコリオグラフィにはそこまでオタクの妄想をかきたてるものがある、ということですね。
最後の最後に、本当にどうでもいい妄想を語るとすれば、将来、ソロアイドルとして日本のアイドル界で確固たる地位を築き、現代の歌姫となった武藤彩未と、BABYMETALのボーカルとして一世を風靡し、日本を代表するメタルボーカリストとして凱旋帰国したSU-METALこと中元すず香が、どこかでこの『FRIENDS』を二人で歌う日が来たら、自分はもう最高に嬉しいし、最高に素敵なことだと思います。
二人もまた間違いなく「ライバルと親友」だと思いますからね。
- アーティスト: さくら学院,卒業生,バトン部 Twinklestars,帰宅部 sleepiece,クッキング部ミニパティ,重音部 BABYMETAL
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